宵待ち月

【子母澤類・著】真一は、今は亡き父の愛人だった桐野小夜子の家に向かっていた。これで二度目だ。一度目は父の死の知らせを受けたとき。今回は妾宅に関して遺言状に記された話をつけるためだった。大学の助教授をしていた、まじめだけが取り柄だった父はなぜ、小夜子にのめりこんだのか…この女の故郷にいついた理由は──いつの間にか、真一の前に酒が用意されていた。「お月見には、お酒がなくてはいけません」。妾宅から川を挟んで見える月はきれいだった。しみじみとうまかった。徐々に割れる足、息づく女の部分が、月明かりに照らされる。ほとばしりそうなほどの強い欲情が真一に取り憑く──父を奪った女に恋情を抱き始めた真一のとった道は……。

非実在聖少女

【橘真児・著】『処女の女の子、連絡ください』──生島逸朗は、友人との飲み会の席で自分だけが「処女」を味わったことがないことを知り、怪しい掲示板に書き込みをした。すると、意外なほどにあっさりとコンタクトが取れ、初体験の相手となることが叶う。しかも、相手は十六歳、いや、もしかすると十五歳の高校一年生…。果たしてそんなことがあるのか、許されるのか。夢の一夜の鮮明な快感が忘れられず、盗み見た生徒手帳の学校へ、確認をしに行くと──。

天竺牡丹

【藍川京・著】夫・広幸の三回忌を終えた三十代半ばの春菜は、数年ぶりに生まれ育った地に足を運んだ.向かった先は幼馴染の拓磨の家。そこには幼い頃と変わらずダリアの花が咲き誇っていた。拓磨の母親に花をもらおうとインターホンを押すと、そこには四十半ばとなった拓磨の姿があった。「お袋が亡くなる前、ダリアをもらいに来る人がいるから、その人が来るまでは大事に育てろと言われたんだ」昔から決まっていた居場所で抱き寄せられた春菜は……。

掟─くノ一淫法帖 第二回

【睦月影郎・著】小田浜藩に仕える、素破の若き頭目・十郎は、仇敵の間柄にある卍谷の素破で生き残りの女・里見の所在をしるところとなり、江戸へと旅立った。「修練」として叔母のアザミから直前に女を教わり、同行の最中、美少女・瞳とは情を交わす。これも淫術、淫法の手ほどきだった。江戸へつくと、里見が身分を隠し、寄宿している剣術道場にまずは「道場破り」として足を運ぶが、道場には男勝りの菜緒という未通の娘がいた。さらには、里見にもその素性を見抜かれて……。仇敵と取り巻く女たちの間で十郎は、その淫楽と掟に揺れ始める第二回!

掟─くノ一淫法帖 第一回

【睦月影郎・著】素破──関ケ原から二十五年、世は泰平となりつつあったが、それでも戦を想定して、日々隠れ里で鍛錬を怠らない衆がいた。十郎は箱根と足柄の中間、小田浜藩の所領で、姥山の衆の頭目の一人息子として生まれ、叔母のアザミに小さなころから、ひたすら過酷な毎日を黙して強いられてきた。そして、十七歳のいま、江戸へ出立の準備を整えた。世の仕組みを直に感じるだけではなく、仇敵、卍谷の衆の生き残りの女を亡き者にするために…。剣のみにあらず、淫術、淫法が繰り広げられる戦いが始まりを告げる。やがて仇敵の柔肌を朱に染める情愛が──官能文芸誌「悦」掲載の、歴史時代官能長編連載第一回!

白い帯

【藍川京・著】十五年ぶりに陶工・悠吾との思い出の地、唐津を訪れた三十七歳の紫歩は、偶然に導かれるように悠吾が描いた塩沢紬の帯と出会う。女主人と語り合う紫歩の前に現れた四十五歳の悠吾は、紫歩を強引に誘う。悠吾の母の反対を理由に結婚を諦めた紫歩。紫歩が黙って去っていった理由を知りたかった悠吾。それぞれ別の相手と結婚した二人が、十五年間の埋み火をふたたびぶつけ合った…。官能文芸誌「悦」掲載の、大人の情愛短編傑作!

薫る少女

【橘真児・著】「痴漢ですっ!」──朝の通勤電車内に突如響き渡った甲高い声。ひとりの少女が男の手首を掴み、高々とか掲げる。独特のセーラーカラーは聖ハイム女学園のものだ。聡史には他人事だった。が、その二日後、また彼女が痴漢被害に会う場面に遭遇する。そして翌日、彼女・美菜子が自分に密着していることに気づいた。まずい、もしかしたら、小遣い稼ぎの痴漢にされてしまうかも…そう思った瞬間、薫ってきた甘い匂いと、ズボンのファスナーを下し、侵入してきた彼女の指…。官能文芸誌「悦」掲載の、珠玉の女子高生短編作品。

花に呼ばれて、彼女は

【蛭田亜紗子・著】在宅でフリーの広告デザイナーとして働く花奈には発情期があった──若葉が芽吹き花のつぼみが堅くなる季節。排卵期に性欲が増す女性とはまた違った、欲しくて欲しくて、理性をコントロールできなくなる時期。バスの中、突然、襲ってくる火照りに負け、他人に見られながらも自らを慰める。付き合っていた彼に呆られたほどの発情は二年ほど前からか…第七回R-18文学賞大賞受賞の著者による、官能文芸誌「悦」掲載の、女性的感性溢れるEL(エクストリーム・ラブ)短編第一弾!

さくらの夜

【松崎詩織・著】三十年前、中学の卒業式が終わった日の夜、古賀はこっそり夜の教室に佇んでいた。桜の花びらが窓の外を、鮮烈な色彩を持って降り続けていた。そして…白川先生もひとり、教室にいた。東京の私立中学を辞めて、教員不足が深刻な故郷のために三年前に戻ってきてくれた先生。春からは東京の高校にいってしまう古賀は、育んだ恋をこの一瞬に遂げることで頭が一杯になってしまい…そして、その故郷にいま仕事で来ている。急な泊まりに宿を案内してくれた、あのときの桜を眺めていた女性──ラストに鮮やかな展開が待ち受ける、官能文芸誌「悦」掲載の、傑作短編!