もう、16年も前に『休眠』していた「団鬼六賞」。再開の道のりは、ほとんど偶然が重なってのことでした。昨年の春の「艶想」との出会いと、年初の「初夢」です――。
プロ官能作家集団「与」が、昨年3月に立ち上げた、電子同人誌「艶想」の編集長、佐伯香也子さんから、春の東京・文学フリーマッケトで、店長は相談を受けたのです。
編集長役をやりながら書き手であることは、少々、物理的に厳しいという前提はさておき、同人誌ではあるけれどもう少し広く世の中に知らしめていきたい。そのためには、何から手掛けていけばいいか、と。
すでにその時、電子同人誌ではあったけれど、文フリ販売用に少部数の紙冊子を自製されていたんですね。例えば限られた書店でも、こうした冊子を販売していくことは可能だろうか、という具体的な相談を受けたわけです。実はコレ簡単なようで、結構な壁があるんです、日本の書籍流通においては。おおおっ、しかし、なんとかしたいと瞬時に思い立ったんですね。
それは、「艶想」創刊号に佐伯香也子さんが記されていた「巻頭言」と、店長が前回の第20回の「日記」(もう3年前だ!)で書いていたことが、ほぼ同じ野望を秘めていたからです。ここはそれぞれの原典を比較してもらうのがいいんですが、店長の勘違いも含めて、「新しい官能を、もう一度作り直していこう!」的な指向性とでもいいましょうか……。
で、少しずつではありましたが、こういった野望に共感してくれる人や会社を探し始めるのが昨年の夏。
途中割愛で、年末には、実験的な紙化にこぎつけたんですね。高田馬場の芳林堂さんが全面協力! 極々、限られた場所ですが実験販売を実現したわけです。あっ、もちろん賛同を得て、紙化の支援をしてくれたStandards出版さん直営のYOTSUYA BOOKSさんでは、冊子やGOODS販売と、著者講演、シンポジウムなども!!
そんな年末を過ごして、迎えた年明け。店長は、初夢を見るんです。……なんと、横浜の野毛で、生前の団鬼六先生と、二人で飲み歩いている夢を(笑)
ほとんど、こいつはオカルティックな、宗教的な。けどね、そういうことってあんだよなぁ。
まだ「呼ばれ」たくないんで、ただちに黒岩(団先生の本名)本家にお線香を上げにいきましたね。そこで、未亡人と長男に久しぶりに会うわけです。
もともと、佐伯香也子さんから相談を受けたときに、15年休んでいる「団鬼六賞」を搭載しましょうか、などと嘯いていたんですが、待て、これは……、と。
まったく交差するところがなかったのに、「巻頭言」と「日記」の重なり方。そもそも、「団鬼六賞」は「明日を拓く官能」を標榜していた歴史。
とっくに何かを始める資金は枯渇しておりましたが、やるしかないんじゃないか、と。その場で、正式に、未亡人と長男氏に、打診、快諾を得ることとなりました。う~む、
何事にも、人知の及ばぬタイミングってぇのがあるのかもしれません。
しかし、ここからですね。この時点では、まだ電子のみの媒体。多くの公募文藝賞が媒体として保持する紙も近いうちに必要になるでしょう。たとえ少部数でも応募要項の浸透のために、12月20日応募締切前には!
以下は、「第三回 団鬼六賞」募集開始した「艶想」第6號に掲載の佐伯香也子編集長の「宣言」です!!
第三回 団鬼六賞 募集開始にあたり
人は理性のみによって生きているのではない。
愛し、欲し、嫉み、執着し、ときに身を滅ぼすような情念なしには生きられない。
その救いがたくも美しいものを、団鬼六は決して否定しなかった。男女の情愛と人間の業を正面から見据え、それを官能文芸として昇華した。
第二回団鬼六賞から十四年。長い歳月を経て、今、再びこの賞を世に問う時が来た。
無料で分かりやすいWeb官能が広く行き渡る時代にあって、なお取り残される渇望、報われてはならない願い、常識や倫理では裁ききれない感情に言葉を与え、
人間という存在の輪郭を照らしだす。
それこそが官能文芸の役割であり、団鬼六が生涯問い続けたものだ。
その問いを、令和という時代の感性で受け継ぎ、官能文学とは何かをあらためて定義し直す。そのような覚悟を持っての復活である。
情愛と業を肯定すれば、物語は危険な場所へと向かうだろう。だが、欲望を描きながらも、人間そのものを描き切ろうとする苦闘の果てにしか生まれない作品がある。
求められるのは、読み終わっても棘のように残り、いつまでも思い出さずにはいられない切実な言葉の結晶だ。
今回の審査には、第一回より選考委員を務めてくださっている高橋源一郎氏、そして新たに「第一回団鬼六賞」大賞受賞者である花房観音氏をお迎えすることができた。
書き手から書き手へ、情念を描く言葉の技術と精神が、世代を超えて受け継がれていく。その連続性と継承こそが、この賞の最も誇るべき財産である。
団鬼六が拓いた航路は、いまだ終わってはいない。その先に広がる未知の海へ、新たな才能が、今果敢に漕ぎ出していく。
第三回団鬼六賞が、その船出の地となることを、心より願っている。
「艶想」編集長 佐伯香也子
焦らず、気負わず、「呼ばれ」ないためにも(笑)、これからです!!
第一回 大賞『花祀り』花房観音 優秀作『花鳥籠』深志美由紀
第二回 大賞『蝮の舌』うかみ綾乃 優秀作『淫府再興』沢里裕二
第三回 選考委員 高橋源一郎 花房観音 佐伯香也子
(敬称略)
※複数応募不可 お一人一作品まで。枚数・形式など本誌募集要項参照。
